伊勢形紙協同組合

染型紙としての伊勢型紙 Ise Katagami dyeing with stencils

伊勢型紙の本来の用途である染型紙について解説します。
型紙は、着物の小紋や友禅や浴衣などに用いられます。それぞれの柄によって使用される型紙の枚数は異なります。
縞のような柄は、一枚の型紙で染められます。また友禅のような様々な柄や色を用いる場合には何百枚もの型紙を使います。これは、柄や色によって型紙を使い分けるためで、一枚の型紙に一つの柄というふうに使うためです。
また型紙は図案をもとに彫られます。この図案は、染屋からの依頼で図案師が描きます。その図案は、日本古来の文様などをモチーフにしています。
普通の絵と異なる点は、線がつながっているところです。彫った時に柄が落ちないように、にげとよばれるつながりをつくってつなげます。

伊勢型紙には四つの技法がありますが、それぞれには特徴があります。
大きな柄を彫る場合には、引彫りや突彫りが適しています。また、小紋のような細かい柄を彫る場合には、道具彫りや錐彫りを用います。また引彫りや突彫りも細かい柄を彫りますが、大まかに分類するとこのようにいえます。
どの技法にも、その良さがあります。引き彫りはストレートな線をだすことができます。また突き彫りは、線が微妙に揺れるので、手作りの味がだせます。また、枚数を重ねられる点で優れています。錐彫りは、丸だけで柄を表現して、非常に細かい柄を彫ります。道具彫りは柄に合わせて彫刻刀を使うため、非常に均整のとれた柄をつくることができます。
型を彫る職人は、型地紙を何枚も重ねて彫っていきます。一つの染型紙を彫るには、一日でほる縞彫りもありますが、手間のかかるものですと一カ月くらいかかるものもあります。ここが、職人の根気と集中力が必要とされるところです。
彫りあがった型紙は、彫り方によっては紗張りとよばれる技法で固定されます。絹の糸の網を漆で貼り合わせます。こうして出来上がった型紙は、染屋のもとに送られて、着物を染めるために使用されます。

次に実際に染める時、型紙はまず水につけます。伸縮をしないようにするためです。そして、反物の上に置いて防染糊を置いていきます。
基本的には一色につき一回ずつ染めるため、柄によっては何回もこの作業をします。糊のついた反物を染料で染めます。
そして糊を洗い流すと、そこが白くなり、模様となります。またいくつもの色を使う場合には、後で染めた色が勝つので、下地の色から染めていきます。また縞のような柄は、一枚の型紙を順番におくって糊を置いていきます。型紙には星と呼ばれる印がついており、それを頼りに送ります。染めた後、少しの修正を加えて、反物は出来上がります。そして、着物の問屋へ納められます。
しかし、浴衣は少し染めた方が異なります。注染と呼ばれる手法を用いて染めます。何反もの布をつながった状態で、順番に糊を置いていきます。そして、折っていき重ねていきます。そして、重なった状態の反物を、下から空気で吸引して、上から染料をながしていきます。
この時に、一番上には糊で土手をつくり他の色と混じらないようにして、いくつもの色を使います。また水を使うことでぼかしの模様も染めることができます。一度裏に返してまた染料を流して染めます。そして糊を洗い流して出来上がります。
こうして染めるために使われた、型紙は保存されます。再度使うこともありますし、資料として保存するためでもあります。染屋には何千枚の型紙が保管されているといわれています。これをもとに また新しい柄の型紙を発注したりします。
この染屋と型屋はお互いが切磋琢磨して、よりよい着物をつくるために仕事を行っています。